慣習
夜の闇、獣の鳴き声の聞こえるほか静寂が満たすはずの時刻。
若い男女のひそやかな話し声が聞こえる。
「本当に、よろしいのでしょうか…このようなことをして…ケビン様」
若い娘はケビンと呼ばれた少年に不安そうに話しかける。
不安が影をその表情を曇らせていながら、なお娘は美しかった。
流れるような黒い髪は艶やかに輝き、瞳の色は夜の闇よりもなお黒い。
すらりとした手足を持っているが、惜しいことにその手は荒れている。
日々の仕事が娘の手を酷使した結果だった。
少年はそんな少女の荒れた手すら愛しいと思った。
「父さんは絶対に僕たちのことを許してくれないよ。ヴェラ」
少年は愛する娘の手を取りキスをして言った。
ヴェラと呼ばれた娘は自らが仕えるべき家の跡取り息子である少年と駆け落ちをしていた。
彼女は幼い時から領主である少年の父の家で使用人として仕事をしていた。
両親もそうだった。
年の近かった二人はいつしか惹かれあい、少年は娘に愛を告げた。
ヴェラは戸惑い、喜び、そして拒絶した。
この世界の「慣習」は決して2人が結ばれることを許さないから。
そして、少年には婚約者がいた。
それこそただの使用人に過ぎない娘とは違う世界に住む、少年に相応しい相手が。
しかし、世界を知らない少年は諦めることも知らず熱心に幾度も愛を囁いた。
幾度目の告白だっただろう。
娘は頷いた。
この幸せは続かない、そう思いながらも少年の愛に心を動かされたのだ。
そうして、夜陰に乗じて2人は逃げた。
「とりあえず、今日はここで泊まろう」
そう言って、2人は宿を取った。
夫婦として。
そして、今夜本当の夫婦となろうとしている。
今、2人は生まれたままの姿になっている。
「ヴェラ、君とこんなことができるなんて、僕は幸せだよ…」
ケビンはそう言いつつ、ヴェラの口を情熱的に奪う。
触れるだけの口付けではなく、互いの舌を交わらせる口付けを。
「ん…んむ……ん」
ケビンは唇を蹂躙しながら、ヴェラの乳房を弄る。
痩せた娘の胸でも少年は興奮していく。
「ん…あっ……んあっ……ああっ…ケビン様っ…」
ヴェラの切ない喘ぎ声が少年を興奮させる。
「様はいらないだろう…ヴェラ…」
耳元で囁いた後、今度は乳首に吸い付く。
「ああっ……あっ…ケビン……ああっ」
あちこちに口付けをして、自らの跡を残す。
もう、彼女は自分のものなのだ。
どれだけこの日を夢見たことか。
ケビンは彼女をベッドまで運び彼女を下ろし、その足を広げる。
自分がこれから彼女の初めてを貰うのだ。
ヴェラの秘所に指を這わせる。
「ああっ…ケビン」
敏感に感じる娘。
そこはすでに濡れていた。
だが、自分をきちんと受け入れるためにはもっと濡らしたほうが良いだろう。
秘所を自分の指でゆっくりと擦っていく。
「ああっ……あっ、あっ、あっ…ああっ、やん…ああっ」
愛しい娘の乱れる姿とそれをしているのが自分だということにケビンは喜ぶ。
「慣習」などまるで関係ないではないか。
自分たちが結ばれるのに何の問題があるだろうか。
「ヴェラ、どう?気持ち良いかい?」
「ああっ……はいっ…ケビン…いいっ……ああっ」
その言葉で、よりいっそう指で彼女の秘所を蹂躙していく。
「ああっ、やっ、あっ、あっ、あぁあああああああああああ!」
ビクンとヴェラは体を震わせてイッた。
宿屋の中なのでなるべく大声を出さないでいたが、ヴェラは声をあげてイッてしまった。
彼女の秘所はケビンを受け入れる準備を整えていた。
彼のペニスもヴェラを強く求めていた。
「ヴェラ、いれるよ…」
「はい、ケビン…」
そう言ってヴェラの中にケビンは己のペニスを挿入した。
「くっ」
「ああっ」
2人の声が重なる。
ヴェラの中は信じられないほど熱く、ケビンのペニスを締め付けた。
今にも彼女の中に出してしまいそうだ。
彼はなんとかその衝動を押さえながら彼女の中を進んでいった。
そして。
「いぐっ」
ヴェラが苦痛の声をあげる。
「ヴェラ、大丈夫…?」
口ではそう言ったものの、ケビンの中にそれを思いやる余裕はうせていた。
「はい、平気です…っつ」
ケビンは彼女が拒絶しても彼はやめなかっただろう。
しかし、彼女は苦痛を浮かべながら彼を受け入れようとしている。
自らのペニスを彼女の奥までまで突き入れる。
「ああっ…ヴェラ、すごく気持ちいいよ…」
うっとりとした声でケビンが囁きかける。
「はい……私たちは結ばれたのですね…」
その瞳に涙を浮かべながら、ヴェラは頷く。
ケビンに再び彼女を気遣う心が生まれる。
「本当に大丈夫?涙まで流して…苦しいならそう言って」
涙を流すヴェラに少年が言葉をかける。
「いいえ、いいえ、あなたと結ばれたことが嬉しくて、ケビン」
苦痛のためもあるだろうが、ヴェラは涙を流すほど嬉しいと言う。
「僕も、君と一つになれて凄く…幸せだ…」
「動いてください…」
「えっ?」
「我慢は、しなくていいです」
そう言ってヴェラはケビンに微笑む。
その瞬間に彼は己の快楽を求める獣となった。
「ヴェラッ、ヴェラッ、ヴェラッ」
そう言いながら、激しく腰を振る。
「ぐっ…あうっ……いぐっ…」
ヴェラは声を押さえようとしながらも、苦痛の表情は隠せない。
しかしケビンは構わずに彼女の秘所を突き続ける。
初めての少年に、限界が訪れる。
「ヴェラッ、ヴェラッ、ヴェラッ、ヴェラァッ!」
叫びとともに射精する。
その感覚はとてつもなく素晴らしく、彼はその感覚に身を委ねる。
そして全てを出し終えた後、彼女の上にのしかかる。
彼女の肉体は優しく彼を受け止める。
しばらくして、ケビンはヴェラの手を取って囁く。
「ああ…ヴェラ、愛してる…」
「私もです、ケビン…」
そう言って2人は口付けを交わした。
そして、この幸せはそこで終わった。
「くっ…ここは…?」
いったいここはどこだろう?
頭がふらふらする。
ヴェラと愛を交わして眠りに就いたはずだったが、起きてみると鉄格子のはまった部屋の中。
まるで、牢獄ではないか。
不安を覚えながらヴェラを探す。
しかし、部屋の中には自分以外誰もいない。
声の限りにヴェラの名を呼んでも何の返事も無い。
押し寄せる恐怖と戦いつつ時間ばかりが過ぎていく。
どれほど経ったろうか。
足音が聞こえてくる。
(一体、誰だ…?)
そして、足音が近づいてくる。
やって来た人物はケビンの父である領主だった。
兵士を伴いながらやって来た父をケビンは呆然とする。
「目が覚めたようだな、愚か者め」
実の子であるはずのケビンに対してもその声は冷たく、威圧的なものだった。
「父上…ここは…?」
「お前は何も知らぬ愚かな子供だ。そして、愚かな行為をした。愚かな行為には相応の罰が必要だろう」
父の声が一層冷たいものとなる。
ここは牢獄だというのだろうか
「ヴェ…ヴェラは?」
「お前を誘惑した娼婦が気になるのか?」
愛する人を娼婦と呼ぶ父に怒りが湧き起こる。
「ヴェラは娼婦なんかじゃない!」
「お前とあの娼婦は住む世界が違う」
冷淡な父の声。
この父から人間味を感じたことがあっただろうか。
「あの娼婦とお前は結婚などできん」
「僕は、僕は…」
父になんと言い返せば良いのか分からない。
「あの娼婦を妾にするなら許そう。その程度のわがままなら聞いても良い」
「彼女は僕の妻だ!娼婦でも妾でもない!」
父はケビンの叫びなど聞こえなかったかのように冷たく見下ろしている。
やがて父は兵士に何かを命ずる。
それに頷いた兵士は鍵を取り出して、ケビンの牢の鍵を開ける。
「父上…?」
なぜ、開けたのだろう。
父の意図が理解できない。
「ついて来い。お前の娼婦に会わせてやる」
そう言われてはケビンは頷くしかなかった。
両側に兵士がつき、身動きのとれない状態で通路を進んでいく。
そして、進んだ先にヴェラがいた。
「ヴェラ!」
叫んで駆け寄ろうとしたが、兵士に掴まれ身動きが取れない。
「ヴェラ、平気、大丈夫?」
「はい、平気です、ケビン様…ただ、気分が…少し」
その言葉に心配になるが、自分には何もできない。
そして敬称をつけられたことに悲しみを覚える。
ヴェラが父を見て跪く。
「ああ…御館様、ケビン様は悪くないのです…私が悪いのです」
鉄格子越しに自分のことをまず気遣ってくれたことにケビンは感動を覚える。
「娼婦と愚かな子供が一緒になれば、このようなことは起こり得ることだ」
父の冷たい口調と娼婦という呼び方が気になったが、別に怒ってはいないようだ。
父は続ける。
「だが、愚かな子供は学ぶ必要がある」
そう言って領主は合図する。
兵士たちが鎖で繋がれた薄汚い男たちを連れてくる。
「父上…彼らは、一体?」
「お前はここをどこだと思っている?愚か者め」
父が心底呆れたという声を出す。
すると、彼らは囚人なのだろうか。
「何を、するのですか、父上…」
だが、返事をしたのは別の声だった。
「へへっ、領主様…本当に、この女を犯って良いんですかね?」
下卑た男の声。
囚人が淫らな目でヴェラを見つめている。
信じられなかった。
こんな男たちがヴェラを…
一瞬自失したが、父の声がケビンを現実に戻す。
「誰が話していいと言った」
そう言って父があごをしゃくる。
ためらうことなく兵士が男を剣で切り捨てた。
声をあげる間もなく崩れ落ちる男。
他の繋がれていた男たちも呆然とするが、自分たちに被害がないと理解すると、再びヴェラを見る。
男たちの視線にヴェラが怯えた表情を浮かべる。
呆然としていたケビンだが、現実に倒れた男よりもヴェラのことをなんとかせねばと落ち着こうとする。
「ち、父上」
それでも、声が震える。
「何だ」
「止めてください、ヴェラを、彼女を出して下さい!」
「お前はあの娼婦を妻などと言ったな。あの娘は娼婦だ。それをお前の目で見て理解する必要がある。やれ」
最後の言葉は兵士たちへの命令だった。
兵士たちは手足を繋がれたままの男たちはヴェラのいる牢屋に入れる。
繋がれたままの男たちはヴェラに襲い掛かる。
「ヴェラ!」
「いや!」
彼女は繋がれていなかったが、鎖に繋がれている男たちは数も多く、力も強い。
そして、彼女自身の抵抗も少なかった。
ケビンには知る由もないことだったが、ヴェラは大量の催淫剤が投与されていたのだ。
そのため彼女の肉体は男を欲していた。
たちまち組みひしがれる。
「へへ、いい女じゃねえか」
「俺が最初だろ」
「いや俺だ」
言いながら、男たちはヴェラの服を引き裂いていく。
「やめて…やめて…」
「ヴェラ、ヴェラ!」
ヴェラがすすり泣く。
構うことなく、1人の男が自分のペニスをヴェラの中に突き入れる。
愛撫などかけらもしていないそこに何の加減も無く。
「いやあ!」
しかし、ヴェラの叫びは快楽の叫びだった。
媚薬の効果で男受け入れるのになんの問題も無かったのだ。
男は腰で激しく突く。
「ああっ、ああっ!駄目!やめて!」
しかし、この時はまだ、彼女の理性が男の行為を拒絶していた。
泣きながら懇願するヴェラ。
「まさか牢屋の中でこんな女とやれるとはな!」
ひひっと下品な笑い声と共にヴェラに挿入した男が興奮した声で腰を動かす。
「いやあっ!見ないで、ケビン様!」
絶叫するヴェラをケビンは呆然と見つめる。
「…ヴェラ…」
しかし、やがて彼女の様子がおかしいことにケビンは気づく。
「やめて…!はぁん…あっ……ああっ……んあっ…駄目っ…やめて……おかしく…なっちゃう…ああん…」
ヴェラは顔を紅潮させ瞳を潤ませる。
絶叫も喘ぎ声に変わり、淫らな雰囲気を宿していく。
「やあっ……ああっ……はぁっ…あん……駄目…駄目ぇ……ああっ…やあっ」
「ひひっ、感じてやがる…」
彼女の「駄目」や「やめて」という言葉も男を誘うような言葉になっている。
他の男たちも彼女のあらゆる部分を汚していた。
手、足、胸、顔、腰、もも、あらゆる男たちが自分のペニスを擦り付けたり、舌を這わす。
催淫剤と多くの男たちの刺激が彼女に激しい快楽を与えた。
初体験の苦痛もケビンとの行為があったため無い。
「くっ、いくぞ!」
「いやあ!もっと!頂戴!あっ、やあっ、やぁぁああああああああああ!」
理性のかけらもない声で絶頂を迎えるヴェラ。
「次はおれだ!」
射精した男を押しのけ、絶頂したばかりの彼女に乱暴に挿入する。
「ひいぃ!」
快楽とも苦痛ともつかぬ声をあげるヴェラ。
その様子に顔を背けようとするケビン。
だが、兵士が顔を背けさせない。
「しかと見るのだ」
このような状態でも父はいつもと変わりない声で話す。
ならばと目を瞑る。
だが、すると聴覚が敏感になる。
「すごい!いい、いい、いい!あぁ、あぁ、ああっ!」
快楽に喘ぐ雌の声が聴覚に刻み込まれる。
自分ではない男を求め、汚されることを望むヴェラ。
ケビンは目を開ける。
男の一人がヴェラの口にペニスをねじ込み腰を振っている。
「ふぐぅ、うぐぅ、んぐう、んん!」
激しく腰を振られ、涙を流しながらも、その瞳にあるのは愉悦。
別の男が彼女の手にペニスを握らせる。
ヴェラはそれを握って、擦り出す。
男たちは白濁の液体でヴェラを汚していく。
美しいヴェラがどろどろと白く汚されていく。
彼女の美しい黒髪も無残なものとなっている。
口を塞がれているが、たまに口が開いたときも彼女は。
「凄い!いい!やあっ、もっと、あぁん、やあ!」
と淫らな嬌声をあげるばかり。
やがて、男たちが力尽きたのか、男たちがヴェラへの射精を止めていく。
そして。
「もう、終わりだ」
父がそう口にしたのが合図だった。
男たちは部屋から出されどこかへ連れて行かれる。
1人、ヴェラが残った。
「ヴェラ…」
ケビンは呆然と呟く。
「あひい、ひひ、あはっ、あはあ」
さんざん男たちの欲望を受け止めたヴェラは壊れたように笑い続ける。
ケビンは父が銀貨を何枚も取り出すのをぼんやりと見る。
「お前が渡せ」
「えっ?」
「娼婦をただで抱けるはずがなかろう。あの男たちを抱かせた代金だ」
なすすべもなく受け取る。
兵士たちが彼の身を開放する。
牢の中に急いで入る。
「ヴェラ!」
「あはあ、ケビンさまぁ」
未だに壊れたままの彼女に近づくが、彼女に触れることができない。
どこもかしこも彼女の体には白い白濁が汚しているからだ。
「ヴェ、ヴェラ…大丈夫…?」
「気持ち良いですよぉ……ひひっ……ケビンさまもぉ…しましょうよぉ…?」
淫らな笑みを浮かべ手を伸ばしてくるヴェラ。
その手にも白濁が。
「ひっ」
思わずケビンは嫌悪の声をあげて彼女の手を跳ね除ける。
そのことにケビン自身がショックを受ける。
そして、ヴェラも。
「わ、私…」
彼女の瞳に理性が戻っていく。
「ヴェラ、ヴェラ」
どうしていいかわからないケビン。
彼女に何か言わなければ。
嫌悪の表情を浮かべたことを謝らなければ。
彼女の手をとって何か言わなければ。
だが、どうしても彼女に手を伸ばすことができない。
「いや、いや、いや、嫌ああああああああああああああああああああ!」
先ほどの絶頂の時よりもはるかに大きな声でヴェラが叫ぶ。
声帯が壊れてしまうのではないかというほど。
ケビンは手を払いのけたことが狂乱のきっかけであったことに気づいた。
それでも、白濁に包まれたヴェラに近づくことができなかった。
こうして、少年は貴族と平民が結ばれることはできないという「慣習」を身をもって学んだ。