弟の願い事 その2
恵理沙は朝から機嫌が悪かった。
秀雄が夜中の三時に自分の部屋に夜這いに来たのだ。
彼は「心配なんだ」「不安だ」などと訳の分からないことを繰り返すばかりで話にならなかった。
それに、まだ小さな誠司をも起こしてしまったことに秀雄は特に気にした様子もなかった。
自分は誠司を傷つけてしまった。
そのことを思うと恵理沙の胸は痛む。
思わず秀雄を怒鳴りつけた時に、たまたま誠司が部屋に来てしまったのだ。
彼はその幼い表情に涙を溜めていた。
恵理沙を心配してきてくれたというのに。
そうだというのに秀雄はふざけた言葉しか言わない。
結局、恵理沙の母と秀雄の父は起きて来なかった。
そのためこのことは話していない。
秀雄の記憶を操作しなかったのは間違いかもしれない。
恵理沙はそんなことを思う。
だが、彼女にはできなかったのだ。
秀雄の記憶を操作したら、秀雄は恵理沙と恋人同士であることも忘れてしまう。
そうしたら、秀雄は他の女の子と付き合いだしてしまうかもしれない。
そう思って、恵理沙は秀雄の記憶をそのままにした。
それに、恵理沙がサンタクロースだと告白した時に秀雄は変わらずに「大好きだよ!」と言ってくれた。
だからこそ秀雄を信じたのに。
自分は間違っていたのだろうか。
恵理沙はそう自問する。
間違っていないはずだ。
彼女は自分に言い聞かせる。
今までも秀雄とは喧嘩したが全て仲直りした。
だから今回も大丈夫なはずだ。
「おはよう、恵理沙お姉ちゃん」
誠司の挨拶が恵理沙の思考を中断する。
「おはよう誠司君」
笑顔で挨拶する。
どうやら、誠司は大丈夫なようだ。
彼を見ていると心が安らぐ。
無邪気に自分を慕う少年。
どうして、秀雄は自分の弟の素晴らしさに気づかないのだろう?
「ねえ、お姉ちゃん」
「何、誠司君?」
誠司は恥ずかしがって「ええっと」「ううん」と言葉を探している。
そんな誠司を恵理沙は可愛らしいと思う。
弟とはこのような感じなのだろうか。
「キス…して」
真っ赤になって小声で言う誠司。
その言葉に恵理沙は一瞬驚く。
すぐ笑顔になる。
「いいわよ」
そう言って彼女は誠司の頬にキスをする。
誠司はキスすると「えへへー」と嬉しそうに笑った。
自分は誠司を傷つけてしまった。
だから、このくらいの願いは叶えよう。
それに一応は「恋人」なのだ。
「お姉ちゃん、大好き!」
(私もあなたのことは大好きよ)
おそらく、誠司の「大好き」とは異なるが。
誠司は恵理沙に抱きつく。
彼女もまた誠司を優しく抱きしめ返す。
仲の良い姉弟といった微笑ましい光景だった。
恵理沙の母と秀雄の父もニコニコと見守っている。
暖かい家族の団欒といった光景だった。
ただ一人、秀雄を除き。
彼は暖かい笑顔に包まれた家族の中で独り、孤独に震えていた。
(何なんだよ、どうしてあいつらだけ…)
秀雄は苛立ちや怒り、不安など様々なものを抱えながら、一年を終えようとしていた。
吉岡秀雄にとって、昨年を思い出すと期間をクリスマスイブまでに区切るのならば、良いものであったといえる。
だが、クリスマス以降の1週間を考えるとそれまでの358日のプラスをひっくり返してしまうほどに悪いものだった。
始まりは何だったのか。
恵理沙がサンタクロースだと告白したことだろうか。
弟の誠司がサンタクロースへのお願いに「恵理沙と恋人になりたい」と願ったことだろうか。
それとも自分が恵理沙を好きになったことだろうか。
自問しても分からない。
ただ、弟の願いが叶い秀雄と恵理沙が引き離され、彼女が弟の恋人になってしまったということだけは確かなようだ。
誠司はまだ8歳なので恋人といっても何をするのか具体的なイメージなどない。
ただ、恵理沙と少しでも長く一緒にいたいと思っていたのは確かなようではあった。
そのために恵理沙は秀雄たちと一緒に住んでいる。
恵理沙と同居できるのだから秀雄としても最初は喜んだが、そんなものは秀雄の思い過ごしだった。
誠司の恋人として一緒にいるために恵理沙とキスができなくなってしまったのだ。
恵理沙とのキス。
最初で最後のそれはクリスマスイブだった。
どんなものだったろう。
ほんの1週間ほど前のことなのに思い出せない。
同じ家に住みながら恵理沙との距離がかえって離れてしまったように秀雄には思える。
今の秀雄は誠司と恵理沙が親密になっていくのを同じ家に住みながら見ていることしかできない。
(畜生、どうして俺がこんな目に遭わないといけないんだ)
そして、最近は恵理沙との諍いが増えている。
誠司のせいによる諍いだというのに恵理沙はことごとく誠司をかばうのも秀雄にとっては不満であった。
秀雄は最も最近に起きた諍いを思い出す。
12月31日。
秀雄たち一家は家で正月を迎える準備をしていた。
本来は恵理沙と共に正月を迎えるのだから秀雄は喜ぶべきところであった。
しかし。
「恵理沙お姉ちゃん、お早う」
「お早う、誠司君」
仲の良い姉弟の朝の挨拶に見えるだろう。
キスさえなければ。
誠司は挨拶とともに恵理沙に抱きつき彼女のの頬にキスをすると、恵理沙も誠司の頬にキスを返す。
唇に触れるものではない。
そして、いやらしさなど感じさせないあっさりとしたものだった。
その点では秀雄の方が唇へのキスをしているので優越感に浸っていた。
だが、朝から二人の親密な様子を見ているとイライラしてくる。
今の自分にはできないことを目の前でされているのだ。
二人とも笑顔でキスを交わす表情を見るたびに怒りが湧いてくる。
おまけに自分が8歳のときには恵理沙とキスするなど夢にも思っていなかったのだ。
誠司は8歳だというのに恵理沙とキスをしている。
(このクソガキ…!)
「早く食事をしろよ」
どうしても言い方がつっけんどんになってしまう。
(こんなんじゃいけないんだ…こんなんじゃ)
恵理沙から反感を買うのは分かりきっていても声に出てしまう。
そのことに自己嫌悪を覚え、イライラが募る。
「そうカリカリするな、秀雄」
穏やかにそう言うのは秀雄たちの父。
父までも誠司たちの肩を持つのか。
そう思うと世界中で自分ひとりだけになってしまったようにすら思える。
一年の最後となる日の朝から胸が悪くなる思いをした。
そう思っていた秀雄だったが、甘かった。
夜、誠司と恵理沙が風呂に入っていく。
風呂場でまた、誠司は恵理沙の胸を触っているのだろうか。
秀雄には触らせてくれたことなどないというのに。
それとも唇にキスをしているのだろうか。
以前、風呂場で盗み聞きしたのがばれて以来、「もう、風呂を覗かない」と約束させられた。
そのために秀雄は2人が風呂場で何をしているか分からない。
分からないために妄想ばかりが広がる。
そんなことが2人が一緒に風呂に入るたびに繰り返されるのだ。
思春期で性的なことに興味が大いにある秀雄にとって妄想などいくらでも出てくる。
恵理沙のの乳房は柔かいのか?
どんな表情で恵理沙は胸を揉ませているのか?
誠司はどんな表情で彼女の胸を揉んでいるのか?
(くそっ!)
自身の妄想により苛立ちが募った頃に2人が出てくる。
今日は恵理沙が誠司の頭を撫でながら、
「ちゃんと30まで数えられるようになったね」
などと言って褒めている。
そんなささやかな事柄も秀雄を苛つかせる。
(風呂に入っただけで何で褒められるんだ?)
皆が風呂に入り終わり、秀雄以外の家族は年越しをのんびりと待っている。
秀雄は神経がささくれている。
「すぅすぅ」
誠司は深夜まで起きることができずに早々に寝てしまっているのだ。
秀雄としては毎年のことなので別段気に留めることではなかった。
恵理沙が誠司に膝枕をしてさえいなければ。
柔かそうできめ細かな恵理沙の白い膝。
風呂上りの彼女のそこに頭を乗せて誠司は安らかな表情で眠っていた。
誠司を優しそうな表情で見下ろす恵理沙。
彼女の膝はどんな感触なのだろう?
極上の枕をしている誠司の安らかな表情を見るほどに秀雄の感情は泡立つ。
「おい、誠司。起きろよ」
秀雄は誠司を揺さぶって起こす。
「ん…んん…兄ちゃん…?」
誠司が目を開ける。
まだ眠そうに目を擦っている。
「今年はちゃんと12時まで起きてるんだろ」
膝枕を止めさせるためにしたことだが、あくまで弟のためだということを言っておく。
ぼんやりとした表情で誠司は頷く。
そして、また目を閉じようとする。
「こら、起きろよ誠司」
頬を軽く叩いて誠司を起こす。
これ以上、誠司が恵理沙の膝枕で寝させる訳には行かない。
「眠いなら寝させてあげればいいでしょ」
恵理沙がやんわりとたしなめる。
「こいつは毎年起こしてくれって言ってるんだぞ」
そのことは本当だった。
毎年、誠司は「ちゃんと起こして」と言っていたが、秀雄はさほど熱心に起こそうとしなかった。
だが、今年は眠らせるわけには行かない。
恵理沙の膝枕という最高の枕を使って眠っているのだから。
「もう……誠司君、今年は最後まで起きるんでしょう?」
優しく、優しく誠司を起こそうとする恵理沙。
すると今回は誠司は目を開けた。
その現金な反応に秀雄は怒りを覚える。
「うん…僕、起きる」
未だに眠そうな表情だが、誠司は膝枕から顔を起こしていった。
父は「偉いぞ、誠司」などと褒めているが、ふざけた話だ。
自分が起こそうとした時は起きなかったのに恵理沙が起こしたら起きるのだから。
冷静に「何度も起こされたのだから目を覚ましたのだ」とは今の秀雄には思えない。
それでも、ここで文句を言っても誰も相手にしてくれないのは分かっているので秀雄は黙っていることにする。
そのことが一層秀雄のストレスになる。
そして新年を迎える。
「ア・ハッピーニューイヤー!」
(どこがハッピーなんだよ)
そんなことを秀雄は思う。
結局、今年は誠司も起きていた。
父も恵理沙も恵理沙の母も秀雄のことを褒めている。
「大人になったんじゃないか、誠司」
「偉いわね、誠司君」
などとたかが12時に起きていただけで皆で誠司をちやほやするのだ。
「えへへ」
などと得意そうに笑っている誠司もまた秀雄にとっては不快なものだった。
何と理不尽なのだろう。
そうして、その日はお開きとなった。
そして今は午前3時。
思い出しだけでムカムカする。
だが、今日は何もしないで寝るわけには行かない。
そう思ってこの時刻まで起きていた。
家族は皆寝静まっている。
(よし)
秀雄は自分の部屋のドアを開ける。
(寒いな…)
音を立てないように静かに廊下を歩く。
目指すは恵理沙の部屋。
そろり、そろりと歩いていく。
恵理沙の部屋の前まで来る。
そして、ドアを開ける。
キィと音がした。
恵理沙の部屋に入る。
部屋の中は女の子の部屋特有の甘い匂いがした。
恵理沙は安らかな表情で眠っている。
そして、デジタルカメラを取り出す。
彼女の寝顔を写していく誠司。
(お前が…お前が悪いんだからな)
最近、自分に冷たくなってきた恵理沙が悪いのだ。
そう自分に言い聞かせながら何枚か撮影する。
カメラをゆっくりと降ろして、恵理沙を見下ろす。
閉じられた紅茶色の瞳。
まだ、起きる気配はない。
(よし)
恵理沙の毛布を引き剥がす。
「んん…」
彼女が眉を寄せ微かに声を上げたので秀雄はビクッとする。
だが、それだけだ。
ほっとした秀雄はそのままパジャマを見る。
白いシンプルなパジャマだ。
そんなものでも恵理沙の美しさを引き立てているように思えた。
しかし、今の秀雄にとっては邪魔だ。
恵理沙のパジャマにゆっくりと手を伸ばす。
彼女に触れなければ服は脱がせるのではないか?
秀雄は妄想を繰り返す中でそんなことを考えたのだ。
そして、今それを実行しようとしている。
手が振るえ、喉がカラカラになる。
恵理沙の純白のパジャマに手が掛かる。
何ともないようだ。
(やった!)
心の中で喝采を叫ぶ秀雄。
そして、なおも震える指で恵理沙のパジャマのボタンを一つだけ外す。
彼女の肌が微かに露わになる。
ごくりと秀雄の喉がなる。
やはり何ともない。
そのまま、全てのボタンを外していく。
(ふ、ふふふっ)
心の中で笑いながらボタンを外し終える秀雄。
そして、彼女の肌が露わになる。
ほっそりとした体で腹部は引き締まっており、なだらかな膨らみをブラジャーが包む。
(綺麗だ…)
ブラジャーで乳首は見えないのが残念だが、彼女の肌が見れたのだ。
秀雄の中で何かが満たされていく。
しかし、これを誠司もまた見ているのだ。
しかも何の障害もなく、下着に邪魔されることもなく。
そう思うとあまりの理不尽さに笑い出してしまいそうになる。
だが、今見ているのは秀雄だ。
ブラジャーを彼女が寝たまま外すのは断念した。
それでも
(俺にはこいつがある)
デジタルカメラの中に彼女を写していく。
恵理沙の美しさをこの中に収めるのだ。
結局、彼女は目を覚まさなかった。
誠司は自分の部屋に戻って、パソコンに取り込んでオカズにした。
その結果、いつもより気持ち良く抜くことができた。
自慰の余韻に浸りながら、それでも秀雄の中にある形のとれないもやもやは解消されなかった。
むしろ、快楽の去った後には惨めな気持ちばかりが残った。
ここ最近見ることの無い恵理沙の笑顔。
いや、違う。
自分に向けられることの無い恵理沙の笑顔だ。
そして、彼女の笑顔は誠司ばかりに向けられる。
それを思い出すと、秀雄の中に悲しみがこみ上げる。
自分にはもう向けらることのないものだろうか。
(畜生、畜生…)
やり場のない怒りから逃れるためにさらにモニタを眺めながら自慰を繰り返す。
その度に訪れる快楽と怒り。
こうして、秀雄の一年は始まった。
吉岡家は正月三が日は込むということで初詣はずらしていくことになった。
三が日は何をやっていたかというと。
「ここはこう解くのよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
絵里沙と誠司がこたつの中で顔を寄せ合っている。
誠司の宿題を絵里沙が手伝っているのだ。
「これで合ってるかな?」
「そうね誠司君、良くできました」
絵里沙が微笑みながら頭をなでる。
「へへ」
嬉しそうにそして、どこか得意そうに笑う誠司。
何の他意も無いはずの無邪気な笑みも今の秀雄にとっては自身に向けられた嘲笑に映る。
秀雄の心は荒んでいた。
(あいつら…くそっ)
「正月くらいゆっくりしたらどうだ」
勉強でなく寄り添う二人に苛立ちを覚えてそう言った。
「毎日こつこつやらなきゃだめだよ、兄ちゃん」
毎日こつこつ。
それはつまり、この光景を冬休み中見せられてきたということだった。
そして、冬休みの間見せられ続けるのだ。
そう思うだけで秀雄は惨めになる。
「絵里沙も嫌がってるんじゃないか?」
「あら、私は大丈夫よ。毎日ほんの少しずつだもの。それよりもまじめに宿題をして偉いわね、誠司君」
「うん、僕がんばるよ!」
せっかく絵里沙のために言ったつもりがあっさりと流され、おまけに絵里沙は誠司を褒め始める。
(ふざけやがって…せっかく絵里沙のためを思って言ってやったのに)
さらに。
「ん……お姉ちゃん…」
こたつで寄り添って眠る二人。
誠司は絵里沙の薄いが柔らかそうな胸に頬を寄せて心安らかな表情を浮かべている。
きっとその胸に絵里沙の匂いを胸一杯に吸い込んでいるのだろう。
そして絵里沙。
そんな誠司を包むようにして、眠っている。
偶然だろう。
偶々、手の形がそういう風になっただけなのだ。
そう思っても秀雄には絵里沙が誠司を抱きしめて眠っているように見えた。
(何で…正月からこんな思いをしなきゃいけないんだよ…)
このような具合だった。
そのため、新年だというのに秀雄は酷く不快な気分だった。
そして、三が日が過ぎ、ある程度空いただろうということになり家族で初詣にいくことになっていた。
男性陣は寒さを防げれば良い、という考えだったので見た目より防寒をもっぱら考えている。
そのため、参拝のため歩いていると目が行くのは恵理沙の方だった。
安岡(今は吉岡)恵理沙の格好を吉岡秀雄はじっと見る。
オレンジを基調として花の模様が描かれている着物を着て、白い帯を身に着けている。
その上にコートを羽織って防寒している。
よく、似合っていた。
秀雄は心からそう思った。
「恵理沙お姉ちゃん、綺麗だね。お姫様みたい」
感動したような口調で誠司が言う。
何がお姫様、だ。
(ガキのくせにお世辞なんか言いやがって)
だが、恵理沙は嬉しそうに笑う。
「ふふ」
ふざけた女だ、と秀雄は思う。
こんな子供のお世辞に喜ぶなんて。
「ねぇ、秀雄はどう思う?」
突然、恵理沙が話を秀雄に振ってくる。
何がどう思うのだろう。
「何が?」
「私の着物よ」
似合っている、と言うべきなのだろう。
事実、着物は恵理沙を美しく引き立てていた。
しかし、秀雄には先ほどの誠司に向けられた笑顔が心に残る。
ここで褒めたら、恵理沙のご機嫌取りをしているように思いそんなことを言う気になれない。
ここで、媚びるの訳にはいかない。
秀雄はそう思った。
「お前には似合わないんじゃねえか」
気のない声で答える秀雄。
その返事に微かに顔を曇らせる恵理沙。
「そう…」
「そんなことないよ、恵理沙お姉ちゃんにとっても良く似合ってるよ!」
横から元気な声が割り込む。
「兄ちゃんには見る目が無いんだよ!」
「ありがとうね、誠司君」
誠司の頭を撫でる恵理沙。
そういった2人のちょっとした触れ合いにも秀雄は苛立ちを覚える。
(ふざけやがって…)
そのために、秀雄は恵理沙にそっぽを向いていた。
だから、秀雄に悲しげな表情を向ける恵理沙に気付くことは無かった。
せっかく着物を着てみたのに秀雄は褒めてくれなかった。
クリスマス以降、秀雄とは喧嘩ばかりしているような気がする。
だから、着物を着て秀雄に褒めてもらいたいというのは贅沢なのかもしれない。
それでも恵理沙は淋しい、という想いが湧いてくる。
着物姿を見せた時は上手くいったと思ったのだ。
秀雄は自分に見とれているように見えたのだ。
だが、恵理沙の着物については秀雄は何も言ってくれない。
誠司は真っ先に褒めてくれたし、秀雄の父の清介も「似合っている」と言ってくれた。
なのに、秀雄は何も言わない。
何も言ってくれない。
とうとう我慢できず、恵理沙から聞いてみれば気のない声で「似合わない」と言っただけ。
どうしてこうも上手くいかないのだろう。
恵理沙は心の中で溜息を吐いた。
「恵理沙お姉ちゃん、元気ないね」
心配そうな声で誠司が聞いてくる。
秀雄も気付かないのに自分を心配してくれたのか。
嬉しいと同時に、こんな子供にまで心配をかけているのだと思うと恵理沙は自分が情けなくなった。
「何でもないわ、誠司君」
彼女は気付かない。
自分が誠司に笑顔を向ける度に秀雄の不快感が増していくことに。
何も知らない恵理沙は、誠司を心配させないためにまたも笑顔を浮かべる。
「やっぱり神社に来たらおみくじを引かなきゃいけないと思うのよ」
恵理沙のその言葉で子供達はおみくじを引くことになった。
去年は散々な最後だった。
今年こそいいことがあればいいが、凶など引いたら目も当たられない。
そう思い、秀雄は最初反対したが、結局恵理沙と誠司に押されて秀雄はおみくじを引いた。
去年は散々だったし今年もどうなるか分からない。
それでも、さすがに凶を引くことはないだろうと思って引いてみたのだ。
(というより、凶なんて引く奴はさすがにいないだろ)
大吉だった。
(ふん、こんなのあてになるかよ)
そう思ったものの悪い気持ちはしなかった。
今年は良いことがあるのではないか、そんなことを思ってしまう。
「私は大吉ね」
次に引いたのは恵理沙だった。
下らないことだが秀雄は(恵理沙と一緒か)などと思ってしまう。
「あら、秀雄も一緒ね」
恵理沙が笑みを浮かべる。
久方ぶりに秀雄に向けられた笑み。
それだけのことに秀雄は喜びを覚えた。
「ああ、そうだな」
秀雄も恵理沙に笑みを返す。
ひょっとしたら今年は本当にいいことがあるかもしれない。
秀雄の中にそんな期待が生まれてくる。
最後に誠司がおみくじを引く。
「僕…」
誠司の表情が暗い。
秀雄と恵理沙は誠司の引いたおみくじを見る。
「まぁ…」
恵理沙が声をあげる。
凶だった。
本当に凶を引く奴がいたのか、とまず秀雄は思った。
そしてすぐにいい気味だ、と思った。
自分から恵理沙を奪ったのだ、弟ながら憎らしいと思っていたが、多少は溜飲が下がる。
自分と絵里沙は仲良く大吉。
そう思うと誠司を仲間はずれにできたという思いも生まれる。
(今年は本当に良い年かも知れない)
暗い喜びに浸る秀雄。
調子に乗った秀雄は誠司を脅す。
「俺の友達が凶を引いた知り合いが交通事故に遭ったって言ってたなぁ」
そんなことをこれ見よがしに言ってみる。
するとたちまち怯えた表情を誠司は浮かべる。
「僕…交通事故に遭っちゃうの?」
その様子に秀雄は心の中で喝采をあげる。
(そうさ、お前なんか交通事故に遭えば良いんだ!)
「さあな、日頃の行いの結果なんじゃないか」
秀雄にしてみれば自分から恵理沙をうばったのだから、誠司など万死に値する。
今のうちに、ネチネチといびってうっぷんを少しでも晴らしたい。
大人気ないと思いつつもやらずにはおれない。
しかし、邪魔が入る。
「大丈夫よ、誠司君。あなたは良い子だって神様も分かってくれてるわ」
「本当に?」
「ええ、本当よ」
絵里沙は暖かい笑顔を浮かべる。
それにつられて笑みを浮かべる誠司。
「ほら、おみくじをこうやって木に結ぶのよ」
そう言って絵里沙は自分のおみくじを結びつけた。
「うん、僕も知ってる!」
そう言って誠司もまた木に結び付けていく。
笑顔で見守る絵里沙。
不快な思いを抱く秀雄。
(絵里沙と一緒に大吉を引いたと思ってたのに…何で誠司を庇うんだよ)
絵里沙にしてみれば、凶を引いた誠司をこれ以上落ち込ませないために言っているだけである。
しかし、秀雄には分からない。
「そうね、誠司君。お賽銭箱にお金を入れに行きましょう」
「お賽銭箱?」
首を傾げる誠司。
絵里沙は笑顔で頷く。
「そうよ。誠司君が今年一年間幸せになれますようにって神様にお願いするの」
「じゃあ、僕は絵里沙お姉ちゃんが幸せになれますようにってお願いするね!」
にこやかに続く絵里沙と誠司のやり取り。
秀雄は自身がないがしろにされているように感じた。
「ありがとう、誠司君は優しいのね。秀雄も来る?」
絵里沙が思い出したかのように誘う。
秀雄にはそう思えた。
秀雄は自分がおまけ扱いされたように感じた。
「俺は…」
「誠司君のためにお願いするくらい良いでしょ」
そう言って絵里沙は秀雄を引っ張っていく。
賽銭箱に五円玉を入れる。
「御縁がありますようにっていう意味なのよ」
絵里沙は誠司に五円玉を投げ入れた意味を説明する。
彼女はそのまま手を合わせて願いを声に出す。
「誠司君が今年一年幸せになれますように」
誠司も真似をして、五円玉を賽銭箱に投げ入れる。
「絵里沙お姉ちゃんが今年一年幸せになれますように!」
そして、絵里沙と誠司は互いを見つめあいくすりと笑う。
暖かい二人の空間。
そこから弾かれた秀雄。
秀雄を無視して二人は笑顔で語り合う。
「誠司君のおかげで私の一年は幸せになりそうね」
「僕もお姉ちゃんのおかげで一年間幸せになれるね!」
自身ではなく互いの幸福を願う二人。
微笑ましいやり取りも秀雄にとっては不愉快極まりないものだった。
(誠司なんか不幸になっちまえば良いんだ!)
手を合わせながら、秀雄は必死に願った。
帰り道。
手を二人で仲良くつなぐ絵里沙と誠司。
絵里沙は秀雄にも手を繋いだらどうだ、と聞いたのだが
「そんなことできるか、ガキじゃないんだぞ」
とすげなく断られてしまった。
昔、と言ってもつい最近までは手を繋いでくれたのに。
それらを含め今年は正月早々大変だった。
絵里沙はそんなことを思った。
秀雄に着物を褒めてもらえず落ち込み、誠司はおみくじで凶を引いてしまった。
だけど。
「今年も良い年になりそうだね!」
元気良言う誠司。
誠司は凶を引いていたのに自分の幸せではなく、絵里沙の幸せを願ってくれた。
優しい子だ。
そう思うと絵里沙の心は暖まった。
この子なら、幸せになれるだろう。
「そうね」
穏やかに微笑み絵里沙。
笑顔が彼女の着物姿をより美しくしていた。
暖かく優しい空気が二人を包んでいた。
それを優しく見守る秀雄の父と絵里沙の母。
そして。
(何が大吉だ…大外れじゃないか!)
少し後ろから鬱屈としたものを抱えながら歩く秀雄。
大吉を引いたのに幸福からぽつんと一人引き離された少年。
吉岡家の初詣はこうして終わりを告げた。
冬休みも終わろうとしているある日のこと。
「兄ちゃん、僕に何か用があるの?」
吉岡秀雄は弟の誠二を自分の部屋に呼び出していた。
恵里沙に邪魔されないように彼女が留守の時に呼び出したのだ。
「お前がクリスマスにしたお願いのことだけどな…」
「恵里沙お姉ちゃんと恋人になりたいっていうの?すごいよね、サンタクロースが本当に叶えてくれたんだもの!」
興奮した様子で話す誠二。
「あれだけどな、本当に良いのか?」
「えっ?僕は全然構わないよ」
何を言っているのだろうという様子で誠二が言う。
そんな誠二に秀雄は苛立つ。
誠二は秀雄を不幸にした上で、恵理沙と恋人となっているというのに。
「お前じゃない。恵里沙がだよ」
「お姉ちゃんが…?」
誠二が不思議そうな顔をする。
「そうだよ、恵里沙がだよ」
秀雄は続ける。
「お前は良かったかもしれないけど、恵里沙は無理矢理恋人にされたんだぜ」
秀雄の言葉に誠二が驚いたような顔をする。
どうやら考えたこともなかったようだ。
「でも…お姉ちゃんは僕のこと好きだって…」
誠二としては恵里沙が自分のことを好きなのだから何の問題も無いと考えていたのだ。
「そりゃそう言うさ。あいつがサンタクロースなんだから。恵里沙はお前の願い事を叶えてやってるんだ」
「お姉ちゃんがサンタクロースだったの?」
誠二は先ほどより驚いた顔をする。
サンタクロースが願いを叶えたことは知っていてもそれが恵里沙だということまでは知らなかったのだ。
それに、誠二の中でサンタクロースというのは髭を生やした太った男性というイメージがあった。
自分が大好きな「恵里沙お姉ちゃん」がサンタクロースだとは思わなかったのだ。
秀雄は頷く。
「そうさ、あいつはサンタクロースの仕事のためにお前と付き合ってやってたんだ」
「そうなの…?」
「でなけりゃお前みたいなお子様の相手なんかするもんか」
誠二は俯いて黙り込んでしまった。
構わずに秀雄は続ける。
「だから、お前は恵里沙の気持ちなんか考えずに勝手な願い事をしてたんだよ」
「で、でも」
誠二は震えた声で言葉を発しようとする。
だが、意味のある言葉とならない。
「お前は恵里沙の気持ちを踏みにじってたんだ」
「僕、僕…」
誠二の瞳に涙が溜まってくる。
泣いてごまかそうというのか。
誠二の涙を見て秀雄の中に怒りがこみ上げてくる。
「お前は俺の気持ちも踏みにじってたんだぞ」
「兄ちゃんの…」
涙交じりの誠二の声。
やはり、誠二は秀雄の気持ちなど考えたこともなかったのだ。
でなければ呆然としたような顔はしないはずだ。
「そうだよ、恵里沙は俺の恋人なんだぞ、それをお前が奪ったんだ」
「グス、ご、ごめんね、兄ちゃん」
泣きながら兄に謝る誠二。
それを冷たく見下ろす秀雄。
「謝って許されるようなことじゃないな」
「ヒック、じゃあ…うう…どうすればいいの?」
泣きはらした赤い目でこちらを見上げる誠二。
「恵里沙が帰ってきたらあいつと別れろ」
「恵里沙お姉ちゃんと…?」
「そうだよ、『お姉ちゃんの気持ちも考えずに勝手な願い事をしてごめんなさい』とでも言ってな」
「そうしたら、許してくれる…?」
すがりつくように言う誠二。
秀雄は寛大な様子で頷いてみせる。
「ああ、もちろんだ。ほら、泣いてないで顔を洗ってこい」
「うん」
そう言って秀雄は誠二を洗面所に連れて行った。
恵里沙に涙の跡を見られ、不振に思われないように。
「あのね…恵里沙お姉ちゃん…」
家に帰ると誠二が元気の無い様子で話しかけてきた。
いつもは元気良く自分に抱きついてくるのだが。
何かあったのだろうか。
「どうしたの、誠二君?」
「僕ね、クリスマスに『恵里沙お姉ちゃんと恋人になりたい』ってお願いしたんだけど」
もちろん、恵里沙は知っている。
今現在、その彼の願いを叶えているのだから。
そして、誠二の次の言葉で恵里沙は驚く。
「僕、お姉ちゃんの恋人にもうなりたくないんだ」
「私のこと、嫌いになったの?」
また、秀雄が何かを言ったのだろうか。
そう思いながら恵里沙は聞く。
「ううん、僕ね、お姉ちゃんの気持ち…全然考えてなかったんだ。恋人になりたいって思ってたの、僕だけなのに…ごめんね」
「誠二君…」
誠二の悲しげな様子に恵里沙の胸も痛む。
誠二は続ける。
「だからね、僕のサンタクロースへのお願いはこれでおしまいでいいよ。ありがとうね、恵里沙お姉ちゃん」
その言葉で誠二の願いの効力は消えた。
月日は流れ。
恵里沙はたった今二人で婚姻届を提出し終えたところだった。。
「これで、私たちは夫婦ね」
恵里沙は彼ににこやか笑みを浮かべながら話しかける。
「そうだな」
「それにしても、誠二君がクリスマスにあんなお願いをした時にはこんなことになるとは夢にも思わなかったわ」
恵里沙が感慨深く言う。
「俺も、まさかこうなるとは思わなかったよ」
彼もまたしみじみと頷く。
そして恵里沙をじっと見つめる。
熱っぽく彼女を求める瞳。
「恵里沙…」
恵里沙もまた、彼に視線を返す。
「愛してるわ…誠二君」
秀雄は自室で自分の何がいけなかったのか、恐らく何千回とした問いを再びしていた。
様々な要因があったのは間違いない。
しかし、最終的に原因を求めるならば一つだろう。
誠二が自分の願い事を諦めた直後に記憶は戻る。
誠二から話を聞いた秀雄は早速恵里沙の部屋へ行った。
すると、そこはもぬけの空だった。
そのことで、誠二の願いは終わったのだと確信を抱いた秀雄は恵里沙が住んでいた家へ一目散に駆けていった。
果たして恵里沙はそこにいた。
彼女の部屋に恵里沙は戻り日常が回復したのだ。
喜び勇んだ秀雄は恵里沙とキスをして。
彼女を押し倒した。
一月にも満たない期間だったが、秀雄にとっては地獄の日々だった。
恵里沙を自分のモノにしたいという想いでいっぱいになっていた所で呪縛が解けたのだ。
思春期の少年の衝動も加わり、恵里沙とセックスをしたくなったのだ。
ところが恵里沙は抵抗した。
『ちょっと…秀雄、止めてよ!』
しばらく口論になった。
『俺、お前が欲しくて仕方ないんだ』
『だからって…私たちまだ中学生よ』
恵里沙の正論にも聞く耳を持たない秀雄。
『そんなの…中学でセックスしてる奴等なんていくらでもいるさ』
『私たちにはまだ早すぎるわよ』
次第に感情的になってくる二人。
『いいじゃないか、ヤらせてくれよ!』
恵里沙を押さえ込んで無理矢理素裸にしていく。
『ちょっと、秀雄、止めて…!』
涙を浮かべ必死に抵抗する恵里沙。
しかし、力では秀雄には敵わない。
秀雄は徐々に露わになる恵里沙の素肌を見て興奮していく。
恵里沙が死に物狂いで抵抗していた所に、誠二がやってきた。
『恵里沙お姉ちゃん!』
誠二も世界が元通りになったことを確めに恵里沙の元へやってきたのだ。
恵里沙は誠二に助けられ、泣きじゃくってた。
そして、秀雄を恐怖と嫌悪の目で睨み付けて『出てって』とだけ言った。
そうして、恵里沙と秀雄は完全に別れた。
秀雄は警察の厄介にはならなかったものの、恵里沙とはもう何年も顔を合わせることはなかった。
そんな秀雄を尻目に恵里沙と誠二は仲を深めていき、本物の恋人となったのだった。
恵里沙に会えない秀雄は代わりにディスプレイを見つめる。
そこにはキスを交わす誠二と恵里沙がいた。
「ん…んん…愛してるわ、誠二君…」
二人は生まれたままの姿だった。
幸せに満ち足りた様子でキスをする。
「恵里沙…前から言いたかったんだけどさ…」
「なあに、誠二君?」
首を傾げる恵里沙。
「その『誠二君』って止めてくれよ…」
困ったような表情で言う誠二。
「どうして?誠二君は誠二君でしょう?」
「いや、俺たち…もう夫婦なのに『君』付けはちょっと……俺だって『恵里沙お姉ちゃん』はやめただろ?」
「もう…わたしは良いのよ、誠二君」
恵里沙は甘えた表情を浮かべて誠二にもたれかかる。
その様子に諦めたような表情を浮かべた誠二だったが、やがて表情を変える。
彼女の求めに応えよう。
そして、恵里沙の胸を揉み始める。
かつて誠二と風呂に入った頃よりも恵里沙の胸は膨らんでいた。
成熟した乳房を堪能する誠二。
「ああん……誠二君……おっぱい……もっと……もっとしてぇ…」
うっとりとした表情で恵里沙は誠二にねだる。
「全く…『恵里沙お姉ちゃん』もすっかりHになっちゃったな…」
笑みを含んだ誠二の声。
しかし、その手は恵里沙の乳房を休むことなく揉みしだく。。
恵里沙の乳房は柔らかく、瑞々しい弾力を持って誠二の手に心地よい感触を与える。
「あっ……ああっ……誠二君の…誠二君のせいで……Hになっちゃったんだよ…はぁん……ああん」
今度は誠二は恵里沙の乳首を口に含み舌で転がしてみる。
「んんっ……やっ…やあっ……ああん……誠二君の…H……ああっ……あん」
乳首を口に含んだまま、空いた乳房を揉んでいく。
そうして誠二は乱れていく恵里沙を愉しむ。
「おっぱい触られるのが好きなんて『恵里沙お姉ちゃん』の方がHだろ?」
今度は乳首をペロペロと舐めながら、手を徐々に下に下ろしていく。
腹部、腰、尻と落としていき撫で回す。
誠二は張りのある尻を嫌らしい手つきで撫で回していく。
その感触を自分だけが味わっている。
優越感に浸る誠二。
「ああっ……やん……ああっ……乳首……乳首がいいのぉ…もっと……乳首ぃ」
恵里沙がおねだりをしてくる。
どうやら、尻を撫でるのに夢中で乳首を疎かにしてしまったようだ。
悪いことをしてしまった。
「ごめんよ『恵里沙お姉ちゃん』」
誠二はそう言って乳首を強く吸う。
「やん……ああん……ああっ……ああっ……誠二君……あっ……やあっ……やああああっ!」
恵里沙が顔を仰け反らせて一際大きな声を出す。
イったようだ。
恵里沙の体から力が抜けるのを感じながら誠二は思った。
「じゃあ……そろそろいいかな…?」
誠二は恵里沙の顔を見ながら確認をする。
誠二のほうはもうすでに準備万端といって良かった。
肉棒がビクンビクンと恵里沙を求めている。
彼女は秀雄に頷く。
「誠二くぅん……早く来てぇ……私、誠二君のこと…欲しくて仕方ないの……」
欲情して潤んだ瞳で誠二に言う恵里沙。
そのことで誠二の肉棒はさらに奮い立つ。
「恵里沙ぁ!」
叫んで誠二は恵里沙を押し倒す。
そして、いきり立った肉棒を挿入する。
彼女の中はすでに受け入れる準備ができていた。
そして、暖かくキツイ締め付けの中に収めていく。
「ああっ」
「くぅっ」
恵里沙と誠二が二人して声を出す。
「相変わらず恵里沙の中って、すごくいいよ…」
「誠二君のも…すごくいいわ…」
何度交わっても飽きることなどないように思える快感。
快楽を共有しながら心を一つにする二人。
やがて、誠二が腰を動かしていく。
「ああっ……誠二君……気持ちいいよぉ…ああっ……ああっ……はあん」
恵里沙は髪を振り乱して快楽を訴える。
誠二も腰を動かせば動かすほどに快楽が増していく。
どうして、これほどまでに気持ちがいいのか。
そう思いながら恵里沙への愛しさで胸が一杯になっていく。
「あっ……あっ……あっ……ああっ…誠二君……誠二…いいっ……いいのっ」
快楽の中で恵里沙は誠二にしがみ付く。
そのまま二人で共に昇りつめていく。
「恵里沙っ……恵里沙っ……恵里沙っ……恵里沙ぁ!」
「あっ……やん……誠二……ああっ……誠二……ああっ…ああっ…ああっ…あぁあああああああああああああああ!」
誠二の肉棒がドクンと脈打つ。
恵里沙の中に注がれていく。
ドクンドクンと脈打つごとに精が注がれていく
彼女の膣はそれを全て受け入れるかのように蠢動する。
やがて、射精が終わり部屋の中には二人の息遣いが残る。
こうして、幼馴染の二人は恋人になり、今夫婦としての初めての行為を終えた。
「はぁはぁ」
ディスプレイに見入っていた秀雄も自慰をしていた。
あれから、恵里沙とは会っていないがこうして、隠しカメラ越しに見つめ、オカズにする日々が続いている。
しかし、不満などない。
どうしてあるだろうか。
自分は演技でなく本気でイった姿を見れるのだ。
AVなど比較にならない。
「ふっ…ふふっ…」
今回はいつもより多く出したような気がする。
後始末をしながらそんなことを考える。
恵里沙が結婚したからだろうか。
そう、彼女は人妻になったのだ。
人妻、という響きだけで興奮する。
その人妻がディスプレイの向こうでセックスしているのだ。
今までよりも興奮するのは当然かもしれない。
画面の向こうではセックスを終えた二人が何やら仲睦まじくしている。
興味がないので、録っておいた他のものを見よう。
今までのセックスは全て保存している。
自分はオカズにこと欠かないのだ。
そう、これでいいのだ。
しかし、そう考えながら秀雄は思う。
ドウシテ涙ガ止マラナインダロウ…と。
「ふふっ…ふふふふっ…ははははははははははははははっ……」